ギャンブルの合法性

日本のギャンブルの合法性
「偶然で決まる勝負事についてお金を賭けて楽しむ行為」であるギャンブル、つまり「賭博」は日本では刑法で定められた犯罪です。一方で、日本には競馬・宝くじ・パチンコ等の公に認められている賭博行為があります。三競オート(競馬・競艇・競輪・オートレース)と宝くじ・スポーツ振興くじ(toto)は一般に「公営ギャンブル」と呼ばれています。

カジノ法(統合型リゾート/IR 整備法)
2016年、カジノを中心とする統合型リゾート(IR)整備推進法、いわゆる「カジノ法」が衆議院を通過しました。このままいけば、日本でカジノが合法になる日も遠くないでしょう。
しかし、カジノ解禁には賭博罪と照らし合わせると、大きな法的問題点があることも確かです。現行刑法には「賭博罪及び賭博場開張図利罪」が存在します。カジノの経営は「賭博場開張図利罪」に該当する行為であるため、カジノを解禁するためには特別法を制定する必要があります。
しかし、前述したように現在の日本では賭博罪が存在する一方で、全てのギャンブルが禁止されているわけではありません。公営競技である競馬や競輪はギャンブルに該当しますが、特別法により違法性が取り除かれています。

カジノにおいてもこのような特別法をつくればよい思われるかもしれませんが、特別法によってカジノを特別扱いするにはこれを正当化する根拠が必要です。一部のギャンブルのみ解禁する特別法は、憲法に定められた平等原則の例外になるため、競馬法や自転車競技法はその合憲性が裁判で争われた例が過去に複数あります。また本来、賭博罪に当たる公営ギャンブルが特別法で存在を許されている理由は、国や地方自治体に財政的貢献をすることにあるためです。しかし、公営競技の売上額は1991年をピークに減少を続け、多くの公営競技場で赤字を出し続けて財政貢献ができないことから、近年違法の状態にあると指摘されています
カジノについてはここで問題が生じます。カジノによる経済効果を最大限に発揮するには、民間による開発が必要だということです。シンガポールでカジノが大成功した理由のひとつは、民間から投資を募り公の負担なしに巨大な開発を実現した点があります。

またカジノ経営には専門的なノウハウが必須であり、これを成功させるためにはそのようなノウハウに長けた民間企業による経営が必要で、カジノを公営にしてしまえば経済効果が大きく減り、解禁の目的が損なわれるとも言われています。ただし、民間が経営するカジノを解禁すれば、賭博罪の特別法での「公営性」を理由にすることはできません。これが日本でカジノ法案の成立が様々な物議をかもす理由です。

 

ギャンブル依存症
また、現在日本でギャンブル依存症が疑われる人数は、国内で約500万人も存在するという推計が厚生労働省の研究班より公表されています。先進国でもトップクラスの依存率を誇り、本人だけでなく、依存症に陥った人の家族・友人も悩まされていることを考えると、ギャンブルが規制されてるはずの日本において異常な数だと言えます。
また、日本においてギャンブル依存症患者のほとんどはパチンコ・パチスロへの依存と言われています。日本の公営ギャンブルは、名目上社会貢献をうたっていますが、内容はギャンブルそのもののため、プレイヤーの依存症に対する危険性は取り除けません。

ギャンブル依存の治療施設
ギャンブル依存症専門の治療施設や自助グループが全国にあります。病院は一般的には心療内科や精神科を受診しますが、病院で自助グループを紹介されることもあります。国内では、独立行政法人国立病院機構・久里浜医療センターにギャンブル依存症治療研究部門があり、2014年厚生労働省からギャンブル依存症の全国拠点機関として認定を受けています。

 

ギャンブルが違法にも関わらず、すでに世界有数のギャンブル大国であり、ギャンブル依存症の患者数が世界でも突出して多い日本に、なぜカジノが必要なのか。その議論はまだまだ続きそうです。